今回は、理系大学生なら思ったことのあるであろう「理系大学生だし、とりあえず大学院に進学したほうがいいのでは?」ということについて、個人的な意見を書いていこうかと思います。
僕自身、進学した理由がいくつかあるのもの「とりあえず進学」という気持ちで大学院に進んだ身でもあるので、かなり参考になる意見が言えるかなと思っています。
先に結論を述べると…
結論を先に言いますと、明確に研究に興味があるのではなく、「とりあえず大学院に進学するか」くらいの気持ちで大学院に進学するであれば、進学せずにベンチャー企業等へ就職したほうがいいと僕は考えています。
もちろん、そう考える理由がありますので、続きを読んでいただけたらと思います。
主に理由は以下の3つです。
- 大学院の2年間で身に付く技術は、企業でお金をもらいながら身に付けられる
- 先に働くことで、その後の活動(大学院進学or勤労)を高いモチベーションで行える
- キャリアチェンジの可能性が広がる
1つずつ説明していきます。
大学院の2年間で学ぶ技術は働きながらでも身に付けられる
まず前提として、明確に研究に興味があり、大学院で研究したいと思っている学生に関しては、大学院に進むことをオススメします。
そのような方は、ここでの話は無視してください。
僕がこのエントリーの対象としているのは、研究に特に興味があるわけでなく、「理系学生は大学院に進学したほうが良い」と聞くから進学しようかなと思っている学部生です。
この前提で、話を進めます。
まず研究室で身に付く技術としては以下の5つがあります。
- 研究の進め方
- 論文の読み方
- 研究に必要な専門技術
- 基本的な思考力
- 文章の書き方
- プレゼンのやり方
この中で、大学院でしか学べない可能性が高いものは、「研究の進め方」と「論文の読み方」、「専門的な技術」になり、残りの3つは実際に企業で働きながらや個人で学ぶことで身に付けることができます。
そして、「研究の進め方」と「論文の読み方」、「専門的な技術」の3つを学ぶことが重要になる人は、研究職に進む人だけです。
多くの理系大学院生は、研究職ではなく、SIerなどの技術職や全く学んできたこととは関係ない職業に就くことになるので、この3つのことを学んでいなくても特に問題ありません。
つまり、研究職以外に進む理系大学院生にとっては、大学院で学ぶ技術のなかで今後社会人として必要となるものは、企業でも学ぶことができるのです。
しかも、お金をもらいながら。
そう考えると、多くの理系大学院生は別に大学院に進学しなくても問題ないのです。
なんならお金をもらいながら学べるという意味では、就職したほうが得です。
この意見については、同じ研究室で大学院まで一緒に行き、卒業後に大手電機メーカーに就職した友人も同じ意見だったので、かなり的を得たものだと思っています。
さらに企業でも学べる3つの技術については、所属する研究室の質によっては大学院では身に付かない可能性もあります。
ハッキリ申し上げると、指導教員のレベルが低い、もしくは指導教員があまり指導してくれないような研究室を卒業する大学院生の多くはポンコツです。
学会や修論発表時のプレゼンを聞いていて、発表スライドの質(話の展開やスライドのわかりやすさ)が低く、正直ひいてしまうこともあります。
幸運なことに、僕や研究室同期の友人は指導教員に恵まれたため、様々な能力を鍛えることができましたが、(もちろん、その分大変でしたけど)
そんな僕たちでも「学部卒業で就職しても良かったかもね」と思ったりもするくらいなので、多くの人にとっては大学院に進まず就職してもいいのかなと思っています。
これはあくまで日本での就職の話です。
アメリカのように大学での専攻を活かした仕事につくとなると、話は変わってきますので、その辺りは注意してください。
また、大学院卒のほうが給料が高くなったり、昇進スピードが上がるなどもありますので、それを考慮して進学するのであれば、それはそれで良いと思います。
(ただ個人的には肩書より能力を上げることに重きを置いているので、そのような考えで進学を決めることは自分はしませんが。)
働く経験がその後の活動の高いモチベーションに繋がる
一度働く経験をすることは、非常に価値があります。
理系大学生は学部生のうちに必ず研究を経験することになりますし、「研究ってこんな感じか」というイメージは持つことができるかと思います。
一方で、学部生のうちに企業で「働く」経験はしていない人は多いですよね?
「研究する」ことと「働く」ことの両方を経験すると、視野がかなり広がります。
実際に、働くことで「やっぱりもっと研究したい」や「研究より開発してるほうが好きだな」と感じたり、なかには「お金を稼ぐほうが楽しい」などのように全く異なる価値観に目覚めたり、研究しているだけでは見えてこなかった自分が見えるようになってきます。
僕自身、大学院を休学して企業で働いたことで、自分のやりたいことが明確になりました。
この「自分のやりたいことの明確化」は早い段階でやっておいたほうが良いです。
さらにやりたいことが明確化されると、その後の活動のモチベーションが上がります。
もともと研究に興味がなく、大学院に進学して2年間研究した後に、やっぱり自分は研究をやりたいわけではなかったなと再確認するのは、その2年間が非常にもったいない。
その2年間で、働きながら実用価値の高いことを多く学べますし、その後の活動へのモチベーションが上がるのであれば尚更無駄にしたくないです。
そしてもし働いた後に、やっぱり研究をやりたいと思った際には、大学院に進学すればよいのです。
キャリアチェンジの可能性が広がる
近年、30歳手前くらいまでであれば、ポテンシャル採用してくれる企業が増えてきました。
そんななか大学院を卒業する年齢って、早い人で24歳ですよね?
つまり30歳まで6年しかありません。
この6年でポテンシャルでキャリアチェンジできるのは、おそらく2回が限度になるかと思います。
一方で学部卒で22歳であれば、30歳まで8年もあります。
8年もあれば、3回くらいはキャリアチェンジが可能になります。
この1回の差は、かなり大きいです。
人間、やってみないと物事の好き嫌いがわからないことが多いので、挑戦できる回数が多いこと(年齢が若いこと)は、それだけで価値が非常に高いです。
またここではキャリアチェンジを取り上げてお話しているのですが、話の本質としては「若ければ若いほど可能性が広がる」ということです。
若いうちの2年間をとりあえず大学院に行くという選択により、無駄にしてほしくないという僕の思いがあります。
最後に
もちろん、とりあえず大学院に行くという選択も僕は尊重します。
大学院では何かしら学ぶことがありますし、その学んだことは必ずその後の人生で活きますからね。
事実として、経験したことは無駄になりません!
ただ、少なくとも僕自身の経験からは、とりあえず進学するかくらいの軽い気持ちで大学院に行くのであれば、就職したほうがより良い選択になるのではと思うのです。
特にスタートアップで働いたことのある経験から言わせてもらうと、2年間もテンポの速い企業で働いていれば、相当な実力がつきます。
そしてその実力は、別の企業に移った際や、大学院に研究しに戻ってきた際にも活かせますので、進学を悩んでいる人たちにとっては就職したほうがより良い選択になると思います。
もちろんその2年間をテンポの遅い企業で何も考えず働くのであれば、それはそれで悩ましいのですが。
また、少し話が大きくなっていまいますが、僕は海外に行った経験から、日本の大学院に進学するのではなく、その2年間でお金を貯めてアメリカなど海外の大学院に進学したほうが絶対有意義だと思うのです。
金銭的にそのような選択肢を増やすことができるという意味でも、上記の3つの意味でも、「とりあえず大学院に行くか」くらいの気持ちで進学するなら、僕は就職することをオススメします。
一応気になる方もいると思うので、僕が大学院に行った理由を書いておきます。
- とりあえず理系なので、大学院に行っておいた方がいいかなと思ったから
- 推薦で簡単に大学院に行けるから
- トビタテ奨学金(学生時のみ応募可)を利用して海外留学したいから
- アメリカでエンジニアとしてインターンシップをするための実力をつけるため
上記のうち最初の2つは安易な考えだなと自分でも思います。一方で残りの2つについては、もともと学部3年生くらいのころから考えていました。
そして、実際に大学院に在籍していた頃に、トビタテの制度を利用して海外に行くことができ、アメリカでエンジニアとしてインターンシップをすることもできました。
また結果論ではありますが、
研究室に恵まれたということもあり、スライドの作り方や話の構成の仕方なども身に付きました。
これらのことから、僕自身には大学院に進んでよかったなという気持ちがあります。
一方で、大学院に進まず就職していても良かったかもなと思わなくもないです。
特に若ければ若いほど日本の社会では何かと有利になることが多いと思うので、年齢のことを考えてしまうとどうしても就職していたらもっと自由度が増していたかもと考えてしまうのです。(隣の芝生は青く見えるという状態だとは思いますが…)
以上を考慮すると自分自身としては割合で言ったら、85%は大学院に行って良かった。残りの15%は学部卒で就職でも良かった。というところかと思います。